効能又は効果
効能又は効果に関連する使用上の注意
1.
本剤の適用にあたっては、日本骨代謝学会の診断基準等を参考に、骨粗鬆症との診断が確定している患者を対象とすること。
2.
男性患者での安全性及び有効性は確立していない。
用法及び用量
通常、成人にはミノドロン酸水和物として1mgを1日1回、起床時に十分量(約180mL)の水(又はぬるま湯)とともに経口投与する。
なお、服用後少なくとも30分は横にならず、飲食(水を除く)並びに他の薬剤の経口摂取も避けること。
用法及び用量に関連する使用上の注意
投与にあたっては次の点を患者に指導すること。
1.
本剤は水(又はぬるま湯)で服用すること。水以外の飲料(Ca、Mg等の含量の特に高いミネラルウォーターを含む)、食物及び他の薬剤と一緒に服用すると、吸収を妨げることがあるので、起床後、最初の飲食前に服用し、かつ服用後少なくとも30分は水以外の飲食を避ける。
2.
食道及び局所への副作用の可能性を低下させるため、速やかに胃内へと到達させることが重要である。服用に際しては、以下の事項に注意すること。
(1)
口腔咽頭刺激の可能性があるので、本剤を噛んだり又は口中で溶かしたりしないこと。
(2)
十分量(約180mL)の水(又はぬるま湯)とともに服用し、服用後30分は横たわらないこと。
(3)
就寝時又は起床前に服用しないこと。
使用上の注意
慎重投与
(次の患者には慎重に投与すること)
1.
嚥下困難、食道炎、胃炎、十二指腸炎、又は潰瘍等の上部消化管障害がある患者[上部消化管粘膜に対し、刺激作用を示すことがあるので基礎疾患を悪化させるおそれがある。]
2.
重篤な腎障害のある患者[排泄が遅延するおそれがある。]
重要な基本的注意
1.
上部消化管に関する副作用が報告されているので、これらの症状があらわれた場合は、本剤の服用を中止して診察を受けるよう指導すること。
2.
骨粗鬆症の発症にエストロゲン欠乏、加齢以外の要因が関与していることもあるので、治療に際してはこのような要因を考慮する必要がある。
3.
患者の食事によるカルシウム、ビタミンDの摂取が不十分な場合は、カルシウム又はビタミンDを補給すること。ただし、カルシウム補給剤及びカルシウム、アルミニウム、マグネシウム含有製剤は、本剤の吸収を妨げることがあるので、服用時刻を変えて服用させること。(「相互作用」の項参照)
4.
**ビスホスホネート系薬剤による治療を受けている患者において、投与経路によらず顎骨壊死・顎骨骨髄炎があらわれることがある。報告された症例の多くが抜歯等の歯科処置や局所感染に関連して発現している。リスク因子としては、悪性腫瘍、化学療法、コルチコステロイド治療、放射線療法、口腔の不衛生、歯科処置の既往等が知られている。
本剤の投与にあたっては、患者に対し適切な歯科検査を受け、必要に応じて抜歯等の顎骨に対する侵襲的な歯科処置を投与前に済ませるよう指示するとともに、本剤投与中は、歯科において口腔内管理を定期的に受けるとともに、抜歯等の顎骨に対する侵襲的な歯科処置はできる限り避けるよう指示すること。また、口腔内を清潔に保つことや歯科受診時に本剤の使用を歯科医師に告知するなど、患者に十分な説明を行い、異常が認められた場合には、直ちに歯科・口腔外科に受診するよう注意すること。
5.
**ビスホスホネート系薬剤を長期使用している患者において、非外傷性の大腿骨転子下及び近位大腿骨骨幹部のストレス骨折が発現したとの報告があるので、X線検査等を実施し、十分に観察しながら慎重に投与すること。この骨折では、X線検査時に骨皮質の肥厚等、特徴的な画像所見がみられ、完全骨折が起こる数週間から数ヶ月前に、罹患部位の前駆痛があるため、そのような場合には適切な処置を行うこと。また、両側性の骨折が生じる可能性があることから、片側で骨折が起きた場合は、他方の大腿骨の画像検査も行うこと。
相互作用
併用注意
(併用に注意すること)
薬剤名等
水以外の飲料、食物
特に牛乳や乳製品のような高カルシウム含有飲食物
多価陽イオン(カルシウム、鉄、マグネシウム、アルミニウム等)含有製剤
ミネラル入りビタミン剤、制酸剤等
臨床症状・措置方法
同時に服用すると本剤の吸収に影響を与えるおそれがあるので、本剤の服用後少なくとも30分は上記の飲食物や薬剤を摂取・服用しないよう、患者を指導すること。
機序・危険因子
本剤は多価陽イオンと錯体を形成することがあるので、併用すると本剤の吸収を低下させる。
副作用
副作用等発現状況の概要
承認時までの調査における1,108例中206例(18.6%)に副作用(臨床検査値の異常を含む)が認められた。主なものは胃・腹部不快感35例(3.2%)、腹痛27例(2.4%)、血中カルシウム減少22例(2.0%)及び胃炎15例(1.4%)等であった。(承認時:2009年1月)
重大な副作用
上部消化管障害
十二指腸潰瘍(0.3%)、胃潰瘍(0.1%)等の上部消化管障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
重大な副作用(類薬)
1.
低カルシウム血症
他のビスホスホネート系薬剤において痙攣、テタニー、しびれ、失見当識、QT延長等を伴う低カルシウム血症があらわれるとの報告があるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
2.
肝機能障害、黄疸
他のビスホスホネート系薬剤において重篤な肝機能障害、黄疸があらわれるとの報告があるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
3.
顎骨壊死・顎骨骨髄炎
他のビスホスホネート系薬剤において顎骨壊死・顎骨骨髄炎があらわれることが報告されているので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、異常が認められた場合には投与を中止するなどの適切な処置を行うこと。
過敏症
1%未満
発疹、そう痒、アレルギー性皮膚炎
消化器
1~5%未満
胃・腹部不快感、腹痛、胃炎
消化器
1%未満
逆流性食道炎、悪心、嘔吐、下痢、便秘、腹部膨満、消化不良、食欲不振、口内炎、口唇炎
血液
1%未満
白血球減少、赤血球減少、血小板減少、単球増加
肝臓
1%未満
AST(GOT)上昇、ALT(GPT)上昇、γ-GTP上昇、ビリルビン上昇、アルカリホスファターゼ上昇、LDH上昇
腎臓
1%未満
BUN上昇、尿酸上昇、クレアチニン上昇
筋・骨格系
1~5%未満
血中カルシウム減少
筋・骨格系
1%未満
アルカリホスファターゼ減少、CK(CPK)上昇
精神神経系
1%未満
しびれ、坐骨神経痛、めまい
その他
1%未満
胸痛、コレステロール増加、脱毛、膀胱炎、副鼻腔炎、倦怠感、血圧上昇、血中リン上昇、血中リン減少
**その他
頻度不明
顔面浮腫
妊婦、産婦、授乳婦等への投与
1.
妊婦等:
(1)
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。[他のビスホスホネート系薬剤と同様、生殖試験(ラット)において、低カルシウム血症による分娩障害の結果と考えられる母動物の死亡並びに出生率の低下等がみられている。]
(2)
ビスホスホネート系薬剤は骨基質に取り込まれた後に全身循環へ徐々に放出されるので、妊娠する可能性のある婦人へは、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[全身循環への放出量はビスホスホネート系薬剤の投与量・期間に相関する。ビスホスホネート系薬剤の中止から妊娠までの期間と危険性との関連は明らかではない。]
2.
授乳婦:
授乳中の婦人には、本剤投与中は授乳を中止させること。[母動物(ラット)へ投与した場合、乳汁中に移行することが示されている。]
小児等への投与
低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児に対する安全性は確立していない。(使用経験がない。)
過量投与
症状:
低カルシウム血症、上部消化管障害(胃不調、胸やけ、食道炎、胃炎、又は胃潰瘍等)が発現する可能性がある。
処置:
吸収を抑えるために、多価陽イオンを含有する制酸剤あるいは牛乳を投与する。また、未吸収薬剤を除去するために胃洗浄を考慮する。なお、低カルシウム血症には必要に応じて、カルシウムの静脈内投与等の処置を行う。
適用上の注意
薬剤交付時:
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。[PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔を起こして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することが報告されている。]
薬物動態
1.
血中濃度
(1)
単回投与
健康高齢男女各10例(65~79歳)及び非高齢男女各10例(20~31歳)にミノドロン酸水和物1mgを空腹時に単回経口投与したとき、高齢・非高齢者とも性差は認められなかった。また、高齢者のCmax、AUC及び投与後24時間までの尿中未変化体排泄率は非高齢者に比べて2.1倍、2.4倍及び2.0倍高く、加齢により本剤の吸収率は上昇することが示唆された1)。(「薬物動態の表」表1参照)
(2)
反復投与
健康成人男子6例にミノドロン酸水和物2mgを1日1回7日間反復投与したときの血漿中未変化体濃度は遅くとも投与7日目に定常状態に到達していると推察された。反復投与7日目のCmax及びAUCは投与初日と比較してそれぞれ1.1倍及び1.3倍であった2)。
(注)本剤の承認された用量は「1mgを1日1回、経口投与する。」である。
(3)
食事の影響
健康成人男子29例にミノドロン酸水和物1mgを空腹時に単回経口投与したとき、血漿中濃度は投与後1.2時間で最高に達し、その濃度は0.39ng/mLで、消失半減期は9.7時間であった。また、食前30分投与では空腹時投与に比しCmaxは約0.5倍、AUCは約0.3倍に低下した3)。(「薬物動態の表」表2参照)
また、健康成人男子12例にミノドロン酸水和物4mgを空腹時、食前1時間又は食後3時間に単回経口投与したとき、AUCは空腹時投与に比べ、食前1時間投与で約0.3倍、食後3時間投与で約0.1倍に低下した4)。
(注)本剤の承認された用量は「1mgを1日1回、経口投与する。」である。
2.
代謝
ミノドロン酸水和物をヒト肝及び小腸ミクロソーム中でインキュベートした際、代謝物の生成は認められなかった(in vitro)5)。
また、CYP発現系において、ヒトのチトクロームP450の分子種(CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6及びCYP3A4)に対してほとんど阻害活性を示さなかった(in vitro)6)。
3.
排泄
健康高齢・非高齢男女各10例にミノドロン酸水和物1mgを空腹時に単回経口投与したとき、投与後24時間までの尿中未変化体排泄率は非高齢男子で0.40%、非高齢女子で0.28%、高齢男子で0.74%、高齢女子で0.75%であった1)。
4.
蛋白結合率
ヒト血漿蛋白結合率は、14C-ミノドロン酸水和物添加濃度5~500ng/mLにおいて61.2~61.9%であり、この濃度範囲においてほぼ一定であった(in vitro、超遠心法)5)。
薬物動態の表
表1
対象 |
Tmax (hr) |
Cmax (ng/mL) |
AUC0-∞ (ng・hr/mL) |
t1/2 (hr) |
尿中 排泄率(%) |
非高齢 男子 |
1.4±0.6 |
0.3134±0.2176 |
1.325±0.845 |
8.2±3.4 |
0.40±0.18 |
非高齢 女子 |
1.2±0.6 |
0.2564±0.1186 |
1.074±0.379 |
11.5±2.8 |
0.28±0.09 |
高齢 男子 |
1.3±0.5 |
0.5555±0.2516 |
2.814±1.196 |
9.7±1.3 |
0.74±0.37 |
高齢 女子 |
1.2±0.7 |
0.6512±0.4425 |
3.051±2.285 |
9.9±1.9 |
0.75±0.56 |
(Mean±S.D.)
表2
投与条件 |
Tmax (hr) |
Cmax (ng/mL) |
AUC0-∞ (ng・hr/mL) |
t1/2 (hr) |
空腹時 |
1.2±0.7 |
0.3895±0.1767 |
1.549±0.682 |
9.7±3.5 |
食前30分 |
0.8±0.3 |
0.1913±0.1092 |
0.504±0.310 |
6.6±5.1 |
(Mean±S.D.)
臨床成績
1.
骨密度試験
退行期骨粗鬆症患者を対象とした48週間の第III相二重盲検試験(骨密度試験)において、本剤群(122例)の腰椎平均骨密度の変化(本剤投与前を100%とする)は106.0%(最終評価時※1))であり、本剤の骨密度増加効果が確認された。大腿骨近位部total骨密度の変化は103.6%(最終評価時※1))であり、本剤の骨密度増加効果が確認された。また、本剤は骨吸収マーカー(尿中I型コラーゲン架橋N-テロペプチド:尿中NTX)を低下させ、骨吸収抑制作用を示すことが確認された7)。(「臨床成績の表」表3参照)
2.
骨折試験
退行期骨粗鬆症患者を対象とした2年間の第III相二重盲検試験(骨折試験)において、本剤群及びプラセボ群の椎体骨折発生率(累積)はそれぞれ10.4%、24.0%であり(相対リスク減少率59%)、プラセボに対して有意な骨折防止効果が確認された(Log-rank検定:p<0.0001)8)。(「臨床成績の表」表4参照)
また、2年間投与による本剤群(83例)の腰椎平均骨密度の変化(本剤投与前を100%とする)は108.3%(最終評価時※4))で、プラセボに対して有意に大きかった(t検定:p<0.0001)8)。更に1年間延長して実施された継続試験において、3年間投与による本剤群(194例)の椎体骨折発生率(累積)は、12.4%であった。3年間投与時の1年毎の椎体骨折発生率(累積)は1年目6.7%、2年目3.6%、3年目3.2%であった。3年間投与による本剤群(56例)の腰椎平均骨密度の変化(本剤投与前を100%とする)は110.3%(最終評価時※5))であった9)。
※4)投与104週後又は投与中止時の時点
※5)投与156週後又は投与中止時の時点
臨床成績の表
表3
投与期間 |
腰椎平均骨密度の変化 (本剤投与前を100%とする) |
投与12週後 |
103.3%(121例) |
投与24週後 |
104.6%(121例) |
投与36週後 |
105.5%(120例) |
投与48週後 |
106.0%(119例) |
|
|
最終評価時※1) |
106.0%(122例) |
※1)投与48週後又は投与中止時の時点
表4
|
本剤群 (n=339) |
プラセボ群 (n=328) |
椎体骨折発生率(累積)※2) |
10.4% |
24.0% |
新規椎体骨折発生率(累積)※3) |
7.8% |
18.5% |
投与24週後以降の椎体骨折発生率(累積)※2) |
4.7% |
16.6% |
※2)新規骨折+既存骨折の増悪
※3)新規骨折のみ
薬効薬理
1.
作用機序
以下の結果より、ミノドロン酸水和物は破骨細胞内でファルネシルピロリン酸合成酵素を阻害し、破骨細胞の骨吸収機能を抑制することにより、骨代謝回転を低下させると考えられる。
(1)
ラットに投与すると破骨細胞に取り込まれる10)。
(2)
in vitroにおいて、ファルネシルピロリン酸合成酵素を阻害する10)。
(3)
ウサギ破骨細胞培養系において、破骨細胞数を減少させる11)。
2.
薬理作用
(1)
骨吸収抑制作用
ウサギ破骨細胞培養系において、骨からのI型コラーゲン架橋C-テロペプチド遊離を抑制する(in vitro)12)。
(2)
骨粗鬆症モデル動物における作用
1)
ラット卵巣摘出モデルにおいて、尿中デオキシピリジノリン濃度の上昇を抑制し、骨密度及び骨強度の低下を抑制する13)。
2)
カニクイザル卵巣摘出モデルにおいて、尿中I型コラーゲン架橋N-テロペプチド及びデオキシピリジノリン濃度の上昇を抑制する。また、骨密度及び骨強度の低下を抑制し、骨密度と骨強度には正の相関関係が認められる14)。
3)
ラットステロイド誘発モデルにおいて、尿中デオキシピリジノリン濃度の上昇を抑制し、骨密度及び骨強度の低下を抑制する15)。
4)
ラット不動化モデルにおいて、骨密度の低下を抑制する15)。
(3)
骨石灰化に及ぼす影響
正常ラットにおいて、骨量を増加させる用量の100倍量まで、石灰化障害は認められていない16)。また、ラット及びカニクイザル卵巣摘出モデルにおいて、類骨幅の増大は認められていない13)14)。
(4)
骨折治癒に及ぼす影響
ラット腓骨骨折モデルにおいて、臨床用量の約1.5倍以上の用量で仮骨の吸収を遅延させたが、臨床用量の約15倍の用量まで骨強度の低下は認められていない16)。