作成又は改訂年月
*2011年7月改訂(第2版)
2011年4月作成
日本標準商品分類番号
873969
日本標準商品分類番号等
国際誕生年月
2011年4月
薬効分類名
速効型インスリン分泌促進薬/食後過血糖改善薬配合剤
承認等
販売名
グルベス配合錠
販売名コード
3969102F1020
承認・許可番号
承認番号
22300AMX00512000
商標名
GLUBES Combination Tab.
薬価基準収載年月
*2011年7月
販売開始年月
*2011年7月
貯法・使用期限等
貯法
気密容器,室温保存
使用期限
外装容器に表示
規制区分
処方せん医薬品注)
注) 注意-医師等の処方せんにより使用すること。
組成
販売名
グルベス配合錠
有効成分(1錠中含量)
ミチグリニドカルシウム水和物(10mg)及び日局ボグリボース(0.2mg)
添加物
タルク,トウモロコシデンプン,ヒドロキシプロピルセルロース,ステアリン酸カルシウム,結晶セルロース,乳糖水和物,三二酸化鉄,黄色三二酸化鉄,その他1成分
性状
販売名
グルベス配合錠
外形:表面
外形:裏面
外形:側面
長径
10.0mm
短径
5.0mm
厚さ
3.0mm
重量
150mg
識別コード
@MV
色・剤形
淡赤白色・素錠
一般的名称
ミチグリニドカルシウム水和物/ボグリボース配合錠
禁忌
(次の患者には投与しないこと)
1.
重症ケトーシス,糖尿病性昏睡又は前昏睡,1型糖尿病の患者[輸液及びインスリンによる速やかな高血糖の是正が必須となるので本剤の投与は適さない。]
2.
重症感染症,手術前後,重篤な外傷のある患者[インスリンによる血糖管理が望まれるので本剤の投与は適さない。]
3.
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
4.
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人[「妊婦,産婦,授乳婦等への投与」の項参照]
|
効能又は効果
効能又は効果/用法及び用量
2型糖尿病 ただし,ミチグリニドカルシウム水和物及びボグリボースの併用による治療が適切と判断される場合に限る。
効能又は効果に関連する使用上の注意
1.
糖尿病の診断が確立した患者に対してのみ適用を考慮すること。糖尿病以外にも耐糖能異常・尿糖陽性等,糖尿病類似の症状(腎性糖尿,甲状腺機能異常等)を有する疾患があることに留意すること。
2.
本剤を2型糖尿病治療の第一選択薬として用いないこと。
3.
原則として,既にミチグリニドカルシウム水和物として1回10mg,1日3回及びボグリボースとして1回0.2mg,1日3回を併用し状態が安定している場合,あるいはミチグリニドカルシウム水和物として1回10mg,1日3回又はボグリボースとして1回0.2mg,1日3回の単剤の治療により効果不十分な場合に,本剤の使用を検討すること。
4.
ミチグリニドカルシウム水和物の治療により効果不十分な場合の本剤使用に関する臨床試験を実施しておらず,有効性及び安全性に関する成績は限られている。
5.
本剤投与中において,本剤の投与がミチグリニドカルシウム水和物及びボグリボースの各単剤の併用よりも適切であるか慎重に判断すること。
用法及び用量
通常,成人には1回1錠(ミチグリニドカルシウム水和物/ボグリボースとして10mg/0.2mg)を1日3回毎食直前に経口投与する。
用法及び用量に関連する使用上の注意
ミチグリニドカルシウム水和物は,食後投与では速やかな吸収が得られず効果が減弱する。効果的に食後の血糖上昇を抑制するため,本剤の投与は毎食直前(5分以内)とすること。また,ミチグリニドカルシウム水和物は投与後速やかに薬効を発現するため,食前30分投与では食前15分に血中インスリン値が上昇し食事開始時の血糖値が低下することが報告されており,食事開始前に低血糖を誘発する可能性がある。
使用上の注意
慎重投与
(次の患者には慎重に投与すること)
1.
肝機能障害のある患者[肝臓はミチグリニドカルシウム水和物の主代謝臓器の1つであるため,低血糖を起こすおそれがある。また,肝機能障害のある患者においては肝機能障害を悪化させるおそれがある。肝機能障害のある患者は代謝状態が変化することがあるため血糖管理状況が大きく変化するおそれがある。重篤な肝硬変例で,高アンモニウム血症が増悪し意識障害を伴うことがある。]
2.
腎機能障害のある患者[ミチグリニドカルシウム水和物は慢性腎不全患者において,血漿中薬物未変化体濃度の消失半減期の延長が報告されていることから,低血糖を起こすおそれがある(「薬物動態」の項参照)。また,腎機能障害のある患者は代謝状態が変化することがあるため血糖管理状況が大きく変化するおそれがある。]
3.
次に掲げる患者又は状態
(1)
虚血性心疾患のある患者[ミチグリニドカルシウム水和物の投与中に心筋梗塞を発症した患者が報告されている。(「副作用」の項参照)]
(2)
開腹手術の既往又は腸閉塞の既往のある患者[ボグリボースは腸内ガス等の増加により腸閉塞様の症状が発現しやすい。]
(3)
消化・吸収障害を伴った慢性腸疾患の患者[ボグリボースの作用により病態が悪化することがある。]
(4)
ロエムヘルド症候群,重度のヘルニア,大腸の狭窄・潰瘍等の患者[ボグリボースは腸内ガス等の増加により症状が悪化することがある。]
(5)
脳下垂体機能不全又は副腎機能不全のある患者[低血糖を起こすおそれがある。]
(6)
下痢,嘔吐等の胃腸障害のある患者[低血糖を起こすおそれがある。]
(7)
栄養不良状態,飢餓状態,食事摂取量の不足又は衰弱状態[低血糖を起こすおそれがある。]
(8)
激しい筋肉運動[低血糖を起こすおそれがある。]
(9)
過度のアルコール摂取者[低血糖を起こすおそれがある。]
(10)
高齢者[一般に高齢者では生理機能が低下している。(「高齢者への投与」の項参照)]
4.
他の糖尿病用薬を投与中の患者[低血糖が起こることがある。(「重大な副作用」の項参照)]
重要な基本的注意
1.
本剤は,ときに低血糖症状を起こすことがあるので,高所作業,自動車の運転等に従事している患者に投与するときには注意すること。低血糖症状が認められた場合には,ショ糖ではなくブドウ糖,又は十分量のブドウ糖を含む清涼飲料水等を摂取すること。なお,患者に対し低血糖症状及びその対処方法について十分説明すること。(「副作用」の項参照)
2.
本剤の適応においては,あらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法,運動療法を十分に行うこと。
3.
ミチグリニドカルシウム水和物又はボグリボースを使用している患者では,投与の際の空腹時血糖が126mg/dL以上,又は食後血糖1時間値又は2時間値が200mg/dL以上を目安とする。
4.
本剤投与中は,血糖を定期的に検査するとともに,経過を十分に観察し,本剤を2~3ヵ月投与しても効果が不十分な場合には,より適切と考えられる治療への変更を考慮すること。
5.
投与の継続中に,ミチグリニドカルシウム水和物又はボグリボースの単独治療に切り替える必要がある場合や,投与の必要がなくなる場合があり,また患者の不養生,感染症の合併等により効果がなくなったり,不十分となる場合があるので,食事摂取量,血糖値,感染症の有無等に留意のうえ,常に投与継続の可否,薬剤の選択等に注意すること。
6.
本剤の配合成分であるミチグリニドカルシウム水和物は,速やかなインスリン分泌促進作用を有する。その作用点はスルホニル尿素系製剤と同じであり,スルホニル尿素系製剤との相加・相乗の臨床効果及び安全性は確認されていないので,スルホニル尿素系製剤とは併用しないこと。(「薬効薬理」の項参照)
7.
本剤と他の糖尿病用薬の併用における安全性は確立されていない(使用経験はない)。
相互作用
相互作用の概略
ミチグリニドカルシウム水和物は主として,UGT1A9及び1A3によるグルクロン酸抱合化により代謝される。また,ボグリボースはヒト血漿中及び尿中に検出されていない。(「薬物動態」の項参照)
併用注意
(併用に注意すること)
薬剤名等
インスリン製剤 ビグアナイド系薬剤 メトホルミン塩酸塩等 速効型インスリン分泌促進剤 ナテグリニド等 α-グルコシダーゼ阻害剤 アカルボース等 チアゾリジン系薬剤 ピオグリタゾン塩酸塩 選択的DPP-4阻害剤 シタグリプチンリン酸塩水和物等 GLP-1アナログ製剤 リラグルチド(遺伝子組換え)等
臨床症状・措置方法
低血糖症状(空腹感,あくび,悪心,無気力,だるさ等の初期症状から血圧上昇,発汗,ふるえ,顔面蒼白等の症状を経て意識消失,けいれん,昏睡にいたる),血糖降下作用が増強されることがあるので,血糖モニター,その他患者の状態を十分に観察し,必要に応じて中止を考慮すること。 チアゾリジン系薬剤との併用時には,特に浮腫の発現に注意すること。
機序・危険因子
・上記薬剤との併用により血糖降下作用が増強されるおそれがある。 ・機序は不明であるが,ミチグリニドカルシウム水和物とチアゾリジン系薬剤との併用時に浮腫の発現が報告されている。
薬剤名等
サリチル酸製剤 アスピリン等 クロフィブラート等 サルファ剤 スルファメトキサゾール等
臨床症状・措置方法
低血糖症状(空腹感,あくび,悪心,無気力,だるさ等の初期症状から血圧上昇,発汗,ふるえ,顔面蒼白等の症状を経て意識消失,けいれん,昏睡にいたる),血糖降下作用が増強されることがあるので,血糖モニター,その他患者の状態を十分に観察し,必要に応じて中止を考慮すること。 チアゾリジン系薬剤との併用時には,特に浮腫の発現に注意すること。
機序・危険因子
・上記薬剤との併用により血糖降下作用が増強されるおそれがある。 ・ミチグリニドカルシウム水和物の血中蛋白との結合抑制及び代謝阻害により血糖降下作用が増強されるおそれがある。 ・アスピリンとして1回量1500mgの併用時に影響する可能性があるが,低用量(アスピリンとして1回量300mg)では影響しない。
薬剤名等
β-遮断剤 プロプラノロール塩酸塩等 モノアミン酸化酵素阻害剤 タンパク同化ホルモン剤 メスタノロン等 テトラサイクリン系抗生物質 テトラサイクリン塩酸塩 ミノサイクリン塩酸塩等 ワルファリン
臨床症状・措置方法
低血糖症状(空腹感,あくび,悪心,無気力,だるさ等の初期症状から血圧上昇,発汗,ふるえ,顔面蒼白等の症状を経て意識消失,けいれん,昏睡にいたる),血糖降下作用が増強されることがあるので,血糖モニター,その他患者の状態を十分に観察し,必要に応じて中止を考慮すること。 チアゾリジン系薬剤との併用時には,特に浮腫の発現に注意すること。
機序・危険因子
上記薬剤との併用により血糖降下作用が増強されるおそれがある。
薬剤名等
エピネフリン 副腎皮質ホルモン メチルプレドニゾロン等 卵胞ホルモン エチニルエストラジオール等 ニコチン酸 イソニアジド ピラジナミド フェノチアジン系薬剤 クロルプロマジン等 利尿剤 チアジド系 クロルタリドン エタクリン酸等 フェニトイン
臨床症状・措置方法
経口血糖降下剤の効果を減弱させ,血糖が上昇してコントロール不良になることがある。 食後の血糖上昇が加わることによる影響に十分注意すること。 併用時は血糖コントロールに注意し頻回に血糖値を測定し,必要に応じて中止を考慮すること。
機序・危険因子
上記薬剤との併用により血糖降下作用が減弱されるおそれがある。
薬剤名等
甲状腺ホルモン 乾燥甲状腺等 グアネチジン硫酸塩
臨床症状・措置方法
血糖値その他患者の状態を十分観察しながら投与する。
機序・危険因子
上記薬剤との併用により血糖コントロールがむずかしくなるおそれがある。
副作用
副作用等発現状況の概要
ミチグリニドカルシウム水和物とボグリボースが併用投与された総症例211例中, 副作用が報告されたのは53例(25.1%)であった。その主なものは,低血糖症状(7.1%),腹部膨満(3.3%),しびれ感,腹痛,放屁増加,体重増加(いずれも1.4%)等であった。また,臨床検査値の異常変動は総症例210例中36例(17.1%)に認められた。主なものは,γ-GTP上昇(3.3%),ALT(GPT)上昇,LDH上昇(いずれも2.9%),AST(GOT)上昇(2.4%)等であった。(承認時)
重大な副作用
1. 心筋梗塞
頻度不明
心筋梗塞の発症が報告されているので,投与に際しては観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。
2. 低血糖
頻度不明
低血糖症状(眩暈,空腹感,振戦,脱力感,冷汗,意識消失等)があらわれることがある。低血糖症状が認められた場合には,ショ糖ではなくブドウ糖,又は十分量のブドウ糖を含む清涼飲料水等を投与すること。
3. 腸閉塞様の症状
頻度不明
腹部膨満感,放屁増加等があらわれ,腸内ガス等の増加により,腸閉塞様の症状があらわれることがあるので,観察を十分に行い,症状があらわれた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
4. 劇症肝炎,肝機能障害,黄疸
いずれも頻度不明
劇症肝炎,AST(GOT),ALT(GPT)の上昇等を伴う重篤な肝機能障害,黄疸があらわれることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。
5. 意識障害
頻度不明
重篤な肝硬変例に投与した場合,便秘等を契機として高アンモニア血症が増悪し,意識障害を伴うことがあるので,排便状況等を十分に観察し,異常が認められた場合には直ちに投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
その他の副作用
代謝
5%以上
低血糖症状(眩暈,空腹感,振戦,脱力感,冷汗,発汗,悪寒,意識低下,けん怠感,動悸,頭重感,眼のしょぼしょぼ感,嘔気,気分不良,しびれ感,眠気,歩行困難,あくび等)
消化器
頻度不明
口内炎,嘔吐,胃痛,胃腸炎,腸管嚢胞様気腫症,食欲亢進
消化器
0.1~5%未満
口渇,胸やけ,嘔気,胃不快感,胃炎,胃潰瘍,腹部膨満,腹鳴,腹痛,放屁増加,下痢,軟便,便秘,空腹感,味覚異常,食欲不振
皮膚
頻度不明
発疹,そう痒,皮膚乾燥,光線過敏症
皮膚
0.1~5%未満
湿疹
筋骨格系
頻度不明
背部痛,筋肉痛,関節痛,下肢痙直
精神神経系
頻度不明
眠気,不眠,ふらつき
精神神経系
0.1~5%未満
頭痛,眩暈,しびれ感,緊張亢進
耳
頻度不明
耳痛
肝臓
0.1~5%未満
胆嚢ポリープ,総ビリルビン上昇,AST(GOT)上昇,ALT(GPT)上昇,γ-GTP上昇,Al-P上昇,LDH上昇
循環器
頻度不明
動悸,高血圧悪化
循環器
0.1~5%未満
心拡大,心室性期外収縮,血圧上昇
呼吸器
頻度不明
咳,咽頭異和感,かぜ症候群
腎臓・泌尿器
頻度不明
腎嚢胞,頻尿
腎臓・泌尿器
0.1~5%未満
尿蛋白,尿潜血,BUN上昇
その他
頻度不明
脱力感,発汗,浮腫,脱毛,眼のしょぼしょぼ感,眼のかすみ,胸痛,右季肋部痛,貧血,血小板減少,顆粒球減少,血清アミラーゼ上昇,乳酸上昇,総コレステロール上昇,LDL-コレステロール上昇,HDL-コレステロール低下,CK上昇,高カリウム血症,ピルビン酸上昇,BNP上昇
その他
0.1~5%未満
けん怠感,冷汗,ほてり,胸部不快感,四肢痛,体重増加,好酸球数増加,好中球数増加,トリグリセリド上昇,遊離脂肪酸上昇,尿酸上昇,カリウム上昇
高齢者への投与
一般に高齢者では生理機能が低下しているので,血糖値及び消化器症状の発現に留意するなど,経過を十分に観察しながら慎重に投与すること。なお,本剤の有効成分であるミチグリニドカルシウム水和物及びボグリボースを低用量で使用する必要がある場合には,各単剤の併用を選択すること。
妊婦、産婦、授乳婦等への投与
1.
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。[ミチグリニドカルシウム水和物は動物実験(ラット)で胎盤通過が認められている。また,動物実験(ラット)で周産期に薬理作用に基づく低血糖によると推定される母動物の死亡が認められている。]
2.
授乳中の婦人への投与は避けることが望ましいが,やむを得ず投与する場合は,授乳を避けさせること。[ミチグリニドカルシウム水和物は動物実験(ラット)で母乳への移行が認められている。また,ボグリボースは動物実験(ラット)で,母動物の糖質吸収の抑制に起因する乳汁産生の抑制によると考えられる出生児の体重の増加抑制が認められている1,2)。]
小児等への投与
低出生体重児,新生児,乳児,幼児又は小児に対する安全性は確立していない(使用経験がない)。
適用上の注意
薬剤交付時
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。[PTPシートの誤飲により,硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し,更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することが報告されている。]
薬物動態
1.
血漿中濃度
(1)
健康成人男性を対象として,本剤と標準製剤(ミチグリニドカルシウム水和物10mg及びボグリボース0.2mgの併用投与)をクロスオーバー法により空腹下で単回経口投与したときの血漿中ミチグリニド濃度を測定し,得られた薬物動態パラメータ(AUC0-5hr,Cmax)から,本剤と標準製剤の生物学的同等性が確認された。また,本剤を投与したときの血漿中ミチグリニド濃度は,投与後0.46時間で最高血漿中濃度(Cmax)(896.9ng/mL)に達し,半減期(t1/2)は1.25時間であった3)。
図 健康成人男性における本剤及び標準製剤投与時の血漿中ミチグリニド濃度(空腹下)(平均値+標準偏差)
(2)
ボグリボースで血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者8名を対象とし,食直前にミチグリニドカルシウム水和物10mgとボグリボース0.2又は0.3mgを単回併用投与したときの血漿中ミチグリニド濃度は,投与後0.28時間でCmax(1395.8ng/mL)に達し,t1/2は1.29時間であり,併用投与による薬物動態の変化はなかった4)。
(3)
健康成人男性にミチグリニドカルシウム水和物5mgを食後に経口投与すると,食直前に比しCmaxの低下及びTmaxの遅延が認められた5)。
(4)
成人腎機能正常者,腎機能低下患者及び慢性腎不全患者(ミチグリニドカルシウム水和物投与前日の平均クレアチニンクリアランス値はそれぞれ113.75,37.01及び3.431mL/min)にミチグリニドカルシウム水和物10mgを食直前に単回経口投与したとき,クレアチニンクリアランスの低下に伴いt1/2は延長したが,その他の主要パラメータ(Cmax,AUC0-inf及びCLtot/F)とクレアチニンクリアランスとの間に,有意な相関は認められなかった6)。
図 腎機能正常者,腎機能低下患者及び慢性腎不全患者におけるミチグリニドカルシウム水和物10mg投与時の血漿中ミチグリニド濃度(平均値+標準偏差)
(5)
健康成人男性(6名)にボグリボース1回0.2mg,1日3回,7日間反復投与した場合,血漿中及び尿中にボグリボースは検出されない7)。
2.
蛋白結合率
ヒト血漿に[14C]標識ミチグリニドカルシウム水和物を添加した時の蛋白結合率は約97%であった(in vitro)8)。
3.
代謝,排泄
(1)
健康成人男性にミチグリニドカルシウム水和物5,10及び20mgを食直前に単回経口投与したとき,24時間までに投与量の約54~74%が尿中に排泄され,そのほとんどがグルクロン酸抱合体代謝物であり,ミチグリニドは1%未満であった9)。
(2)
健康成人男性(外国人)に[14C]標識ミチグリニドカルシウム水和物11mg溶液を食直前に単回経口投与したとき,投与0.5及び4時間後の血漿中放射能は主にミチグリニド由来であり,ミチグリニドのグルクロン酸抱合体はミチグリニドの約1/3から1/6量が存在し,ヒドロキシ体代謝物はさらに少なかった10)。また,投与した放射能の約93%は尿中に,約6%は糞中に排泄された11)。
(3)
ミチグリニドカルシウム水和物は,ヒトにおいて肝臓及び腎臓で代謝され,グルクロン酸抱合体は主に薬物代謝酵素のUGT1A9及び1A3により,ヒドロキシ体は主にCYP2C9により生成されることがin vitro試験により確認されている12,13)。
(4)
(参考)ラットに[14C]ボグリボース1mg/kg単回投与した試験で胎児及び乳汁中への移行が認められており,尿,糞への排泄率はそれぞれ約5%,98%である14)。
薬物動態の表
健康成人男性における本剤及び標準製剤投与時のミチグリニドの薬物動態パラメータ
投与時期 (空腹下投与) |
Cmax (ng/mL) |
Tmax (hr) |
t1/2 (hr) |
本剤(n=40) |
896.9 |
0.46 |
1.25 |
標準製剤(n=40) |
900.0 |
0.44 |
1.23 |
健康成人男性におけるミチグリニドカルシウム水和物5mg投与時の薬物動態パラメータ
投与時期 |
Cmax (ng/mL) |
Tmax (hr) |
t1/2 (hr) |
AUC0-24hr (ng・hr/mL) |
食直前(n=6) |
384.9 |
0.29 |
1.42 |
472 |
食 後(n=6) |
143.5 |
2.08 |
1.26 |
444 |
腎機能正常者,腎機能低下患者及び慢性腎不全患者におけるミチグリニドカルシウム水和物10mg投与時の薬物動態パラメータ
|
Cmax (ng/mL) |
Tmax (hr) |
t1/2(hr) |
AUC0-inf (ng・hr/mL) |
CLtot/F (mL/min/kg) |
Vdss/F (L/kg) |
腎機能正常者(n=8) Ccrが91mL/min以上 |
1275.3 |
0.69 |
1.48 |
1517 |
1.64 |
0.16 |
腎機能低下患者(n=7) Ccrが31~50mL/min |
1643.9 |
0.29 |
3.22 |
2132 |
1.37 |
0.20 |
慢性腎不全患者(n=8) Ccrが30mL/min以下で透析を実施中 |
764.7 |
0.41 |
11.7 |
1741 |
1.70 |
0.86 |
臨床成績
1.
ミチグリニドカルシウム水和物とボグリボース併用療法
(1)
第II/III相二重盲検比較試験15)
食事療法に加えてボグリボース(1回0.2mg)単剤による薬物療法により十分な血糖コントロールが得られていない385例の2型糖尿病患者(併用投与開始時のHbA1c平均値±標準偏差7.10±0.47%)を対象に,ボグリボース0.2mgにミチグリニドカルシウム水和物1回10mgを上乗せして1日3回毎食直前12週間経口投与した。最終評価時のHbA1cの変化量は,ボグリボース0.2mg単独群-0.02±0.36%に対し,ミチグリニドカルシウム水和物10mg及びボグリボース0.2mg併用群で-0.64±0.46%と有意に低下した(p<0.001,分散分析)。
(2)
長期併用投与試験16)
食事療法に加えてボグリボース(1回0.2mg)単剤による薬物療法により十分な血糖コントロールが得られていない161例の2型糖尿病患者(併用投与開始時のHbA1c平均値±標準偏差7.08±0.46%)を対象に,ボグリボース0.2mgにミチグリニドカルシウム水和物1回10mgを上乗せして1日3回毎食直前52週間経口投与した。最終評価時のHbA1cの変化量は,-0.48±0.62%であり,安定したHbA1cの改善が確認された。
薬効薬理
1.
血糖上昇抑制作用
(1)
健康成人男性を対象として,本剤と標準製剤(ミチグリニドカルシウム水和物10mg及びボグリボース0.2mgの併用投与)をクロスオーバー法によりショ糖負荷直前に経口投与したときの血漿中グルコース濃度を測定した結果,本剤投与時と標準製剤投与時の血糖上昇抑制効果は同等であった3)。
図 健康成人男性におけるショ糖負荷後の血漿中グルコース濃度(平均値+標準偏差)
(2)
ニコチンアミド前処置ストレプトゾトシン誘発2型糖尿病ラットにミチグリニドカルシウム水和物とボグリボースを経口併用投与すると,液体飼料経口負荷後の血糖上昇が抑制され,負荷後の血漿中グルコース濃度―時間曲線下面積値は相加的に低下した(in vivo)17)。
2.
作用機序
(1)
ミチグリニドカルシウム水和物
1)
膵β細胞のスルホニル尿素受容体への結合を介して,ATP感受性K+チャネル(KATPチャネル)電流を阻害することにより,インスリンの分泌を促進する(in vitro)18,19,20)。
(2)
ボグリボース
1)
ブタ小腸由来マルターゼとスクラーゼに対してアカルボースよりそれぞれ約20倍及び30倍強い阻害作用を示し,ラット小腸由来マルターゼ及びスクラーゼ阻害活性はそれぞれアカルボースの約270倍及び190倍である(in vitro)。一方,ブタ及びラット膵α-アミラーゼに対する阻害作用はアカルボースの約1/3000であり,β-グルコシダーゼに対しては阻害活性を示さない(in vitro)21)。
2)
ラット小腸由来のスクラーゼ‐イソマルターゼの複合体の二糖類水解酵素に対する阻害様式は競合拮抗的である(in vitro)21)。
有効成分に関する理化学的知見
ミチグリニドカルシウム水和物
一般名
ミチグリニドカルシウム水和物(Mitiglinide Calcium Hydrate) (JAN)
化学名
(+)-Monocalcium bis[(2S,3a,7a-cis)-α-benzylhexahydro-γ-oxo-2-isoindolinebutyrate]dihydrate
分子式
C38H48CaN2O6・2H2O
分子量
704.91
構造式
性状
ミチグリニドカルシウム水和物は白色の粉末である。メタノール又はエタノール(99.5)に溶けやすく,水に溶けにくく,アセトニトリルに極めて溶けにくい。
ボグリボース
一般名
ボグリボース(Voglibose)(JAN)
化学名
3,4-Dideoxy-4-[2-hydroxy-1-(hydroxymethyl)ethylamino]-2-C-(hydroxymethyl)-D-epi-inositol
分子式
C10H21NO7
分子量
267.28
構造式
性状
ボグリボースは白色の結晶又は結晶性の粉末である。水に極めて溶けやすく,酢酸(100)に溶けやすく,メタノールに溶けにくく,エタノール(99.5)に極めて溶けにくい。0.1mol/L塩酸試液に溶ける。
取扱い上の注意
本剤は錠剤表面に赤い斑点がみられることがあるが,使用色素によるものである。
包装
グルベス配合錠:100錠(PTP)
グルベス配合錠:210錠(PTP)
グルベス配合錠:500錠(PTP)
グルベス配合錠:1050錠(PTP)
主要文献及び文献請求先
主要文献
1)
Morseth S. L. et al.:薬理と治療, 19, 4325, 1991.
2)
Morseth S. L. et al.:薬理と治療, 19, 4375, 1991.
3)
健康成人を対象とした生物学的同等性試験(社内資料)
4)
陶易王ほか:薬理と治療, 35(suppl.1), 39, 2007.
5)
健康成人を対象とした第I相臨床試験(社内資料)
6)
腎機能低下者を対象とした臨床薬理試験(社内資料)
7)
平賀興吾:基礎と臨床, 26, 283, 1992.
8)
ミチグリニドの血漿蛋白結合率(社内資料)
9)
健康成人を対象とした臨床薬理試験(社内資料)
10)
健康成人を対象とした海外臨床薬理試験(社内資料)
11)
健康成人を対象とした海外臨床薬理試験(社内資料)
12)
ミチグリニド代謝に関与するUGT分子種(社内資料)
13)
ミチグリニド代謝に関与するチトクロームP450分子種(社内資料)
14)
前芝良宏ほか:薬理と治療, 19, 3639, 1991.
15)
加来浩平ほか:薬理と治療, 35(suppl.1), 51, 2007.
16)
加来浩平ほか:薬理と治療, 35(suppl.1), 73, 2007.
17)
ニコチンアミド前処置ストレプトゾトシン誘発2型糖尿病ラットにおける薬効薬理試験(社内資料)
18)
Ohnota, H. et al.:J. Pharmacol. Exp. Ther., 269(2), 489, 1994.
19)
Ichikawa, K. et al.:Arzneim.-Forsch./Drug Res., 52(8), 605, 2002.
20)
Sunaga, Y. et al.:Eur. J. Pharmacol., 431(1), 119, 2001.
21)
小高裕之ほか:日本栄養・食糧学会誌, 45, 27, 1992.
文献請求先
主要文献に記載の社内資料につきましても下記にご請求ください。
キッセイ薬品工業株式会社 くすり相談センター
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松本市芳野19番48号
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